猫にかつお節を与えてよいか成分表から考える

猫さんはかつお節好きですよね。でも、あげたらダメと言われたり、あげてもいいよと言われたり結局どっちなのという飼い主さんも多いかと思います。今回はかつお節をあげてよいのか悪いのか成分表から考えたいと思います。

かつお節の成分

まずはかつお節の成分表を見てみたいと思います。比較のため、ロイヤルカナンの腎臓サポートドライの成分を併記します。赤くなっているところがかつお節の方が数値が高いものです。

かつお節(削り節)の100gあたり成分表(五訂増補日本食品標準成分表(本表) 魚介類抜粋)

削り節 ロイヤルカナン
腎臓サポート
ドライ
kcal 351 392
水分 17.2g 5.488g
たんぱく質 75.7g 22.932g
脂質 3.2g 16.954g
炭水化物 0.4g 54.782g
灰分 3.5g 5.684g
ナトリウム 480mg 401.8mg
カリウム 810mg 901.6mg
カルシウム 46mg 588mg
マグネシウム 91mg 68.6mg
リン 680mg 303.8mg
9mg 15.386mg
亜鉛 2.5mg 20.482mg
0.43mg 1.4994mg
マンガン 0.05mg
食塩相当量 1.2g 1.0g

※ロイヤルカナンは400kcal当たりの成分値しか公表していないので、392kcal/400kcal=0.98を掛けた値を表記しています。
※ロイヤルカナンの給餌量は体重3kgで40g/1日です。

かつお節の成分検証

見るとわかりますが、かつお節の数値は想像より低くありませんか。比較対象は腎臓ケア療法食です。赤いところについて1つ1つ見てみたいと思います。

たんぱく質

削り節 ロイヤルカナン
腎臓サポート
ドライ
たんぱく質 75.7g 22.932g

多い。多すぎる。圧倒的たんぱく質です。うま味成分の塊なのも納得です。たんぱく質の内訳は置いておきますが、かつお節は魚ですのでアミノ酸スコアは100です。良質なたんぱく質と言えます。

廉価なキャットフードの中には動物性たんぱく質が少ないものも多いので、そういった意味ではかつお節は良い補助食と言えます。ただし、既に十分にたんぱく質を摂取している場合、たんぱく質が過剰となる恐れがあります。現在食べているフードのたんぱく質量を見極めて与えるべきと思われます。

ナトリウム

削り節 ロイヤルカナン
腎臓サポート
ドライ
ナトリウム 480mg 401.8mg
食塩相当量 1.2g 1.0g

思ったより少なかったのではないでしょうか。確認しますが、比較対象は腎臓ケア療法食です。普通のドライフードであれば何ら遜色ないレベルと言えます。そもそもナトリウム過剰による高血圧は犬や猫には見られないという報告も多く、この量であれば気にするレベルにありません。

ただし、腎機能に障害がある場合はナトリウム排出の機能自体が低下しますし、腎臓への負担増にもつながるため、過剰摂取は避けたほうが無難です。

マグネシウム

削り節 ロイヤルカナン
腎臓サポート
ドライ
マグネシウム 91mg 68.6mg

高めです。91mgは一般的な総合栄養食と同等の数値です。マグネシウムは骨を安定させる物質であると同時に神経伝達や筋肉収縮を調整する要素ですので、少ないと低マグネシウム血症を起こします。

ただし、マグネシウムの過剰摂取は尿石の原因となりますので、過剰摂取は禁物です。泌尿器系に不安を抱える場合は、かつお節の摂取は控えたほうが良いかもしれません。

リン

削り節 ロイヤルカナン
腎臓サポート
ドライ
リン 680mg 303.8mg

約2倍ですね。多く見えますが一般的なフードのリン値と同じくらいです。健康であれば何ら問題ないと言えますが、既に腎臓に不安を抱えている場合は過剰摂取は避けたほうが良いです。

また、リンとペアであるべきカルシウムの値が低すぎるので血中濃度のバランス崩壊の不安があります。

かつお節とイエローファット

イエローファット(黄色脂肪症)は青魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸を過剰摂取すると体脂肪が黄色くなる症状です。

多価不飽和脂肪酸というのはキャットフードによく入っているオメガ3とかオメガ6と呼ばれているものです。食事から摂取しなければならない必須脂肪酸です。これは酸化しやすい物質で酸化すると逆に健康被害になるのですが、ビタミンEが酸化を抑えてくれます。つまり、イエローファットは多価不飽和脂肪酸に対してビタミンEが足りないと起きる症状です。

カツオはもちろん青魚ですが、かつお節の多価不飽和脂肪酸量は100gあたり、0.79gとかなり低い部類です。参考までにマトンのロース脂身付き生が0.76gです。更に、成分表には載せていませんが、かつお節は比較的ビタミンEを多く含む食品でもあり、100gあたり1.1mgのビタミンEが含まれています。

つまり、かつお節はイエローファットを誘発する原因としてはかなり弱いと言えます。

結局かつお節を猫に与えてよいのか

ひとつまみ程度なら子猫や成長期の猫であれば何ら問題ないと考えられます。泌尿器や腎臓に懸念がある猫の場合、ミネラルの血中濃度が安定しているのであれば禁止するほどではないですが、積極的には与えないほうが良いと考えられます。

良く売っているヤマキかつおパックが、1パック2.5gか4gのはずです。100gというのはかなりの量です。キャットフードへのトッピングであれば、かなり多くて1gにも満たないでしょう。ひとつまみ程度であれば0.1g未満です。キャットフードを1粒食べたか食べなかった程度の差でしかないです。

成分を見てもこの量で即座に甚大な影響が出るというのは考えにくいです。人間で考えればわかることですが、3食ごはんの時に、おかかのふりかけを必ず食べたからと言って目に見えて何かが悪くなるわけではありません。しかし、3食すべてがふりかけご飯のみだと体を壊してもおかしくありません。つまり、全てはバランスなのです。

これは想像ですが、獣医がかつお節を与えたらいけないという場合、それはかつお節だからというよりも、キャットフード以外与えないでくださいという意味に近いと思われます。キャットフードはそれ自体で栄養バランスが完成していますので、余分なものを摂取するとバランスが崩れます。たまに与えるなど一時的であれば良いですが、長期的にバランスを壊してしまうと、その弊害は大きいです。

逆に言えば、1度の食事のバランスが悪くても、複数回の食事で補完するような与え方ができるのであれば問題ありません。問題なのは毎食バランスの悪い食事を続けることです。

かつお節はナトリウム、リン、マグネシウムが高めですが、これは一般的な総合栄養食と同レベルです。特に多いわけではありませんが総合栄養食と比べてミネラルバランスがかなり悪いので、摂取量が増えるとミネラルバランスの崩れ幅が大きくなり、その影響が懸念されます。特にカルシウムが少なすぎるのでリンとのバランスが気になります。また、たんぱく質も多すぎるので、主食のフードとのたんぱく質の兼ね合いが重要と思われます。

少しでも負荷のないかつお節とは

かつお節と言えば猫用の商品も多く出回っていますね。詳細な成分表が出回っていないので正直なところ人間用と何が違うのか分かりません。しかし、大抵の商品には減塩について言及があることから、ナトリウム値を下げた商品であると推測できます。

もともとのナトリウム量がたいして多いわけではないので、猫用のかつお節を使う必要があるかと言うとあまり無い気がします。例えばマルトモの「かつおだいすき」商品説明のサイトを見ると1日に10g~15g与えてよいと書かれていますが、正直多すぎます。それにペット用おやつは粗悪なものも多いので、品質も気になります。

それであれば、かつお節でだしを取ったあとのものを猫に与えてはどうでしょうか。塩分はもちろん、ある程度のリンやカリウムなども失われます。かつお節の出がらしの成分表と言うのは存在しないので断言できないところですが…。

旨みや風味も減るので猫が食べるかはやってみないとわかりませんが、濡れた状態であれば水分補給もできますし、濡れたものが嫌なら乾かしたものを与えればよいと思います。栄養の摂取を目的としないのであれば、これが一番良い方法だと思います。可能であれば2番だしの後で良いです。

参考までに100gのかつお節で取ったかつお出汁の成分表を載せてみます。
水1リットルに対してかつお節30g使用してだしを取った成分表です。かつお節100gで約3.3リットルの出汁になります。よって、かつおだし100gの分析値に対して33.3を掛けた値を記載しています。

削り節(100g) かつおだし(3.3l)
kcal 351 約100
水分 17.2g 約3307g
たんぱく質 75.7g 約16.7g
脂質 3.2g 約3.3g
炭水化物 0.4g
灰分 3.5g 約3.3g
ナトリウム 480mg 約666mg
カリウム 810mg 約865.8mg
カルシウム 46mg 約67mg
マグネシウム 91mg 約100mg
リン 680mg 約566mg
9mg
亜鉛 2.5mg
0.43mg
マンガン 0.05mg

五訂増補日本食品標準成分表 第3章 資料 1 食品群別留意点
※「削り節」は、「かつお節」を機械で薄片とし、少量ずつ窒素ガスと共にガスバリア性の袋に密封したものを試料とした。成分値は、分析値に基づき決定した。
※「かつおだし」の成分値は、沸騰水に対し3%の「かつお」の「削り節」を加え、再沸騰から1分後に火を止め、削り節が沈んだ後、布でこして得られただしの分析値に基づき決定した。

だしの分だけかつお節から成分が失われているということを示す予定だったのですが、かつおだしの方が分量が多いものもありますので一概にそうは言えません。これはおそらく水とかつおだしの比重の違い、濾し方の違い、使用した水の違い、使用したかつお節の違い等によるものと思われますが、あくまで参考資料ですのでそのまま掲載します。

ともかく言いたいことは、だしを取ることで、かつお節から成分が失われるということです。

かつお節まとめ

猫が食べるのであればだしを取った後のかつお節を与えるのが最も栄養バランスへの影響が少ないです。

そうでなくとも、時々かつお節を与える分には健康被害に直結するとは考えづらいです。時々がどのくらいの頻度か難しいところですが、例えば体重3kgの猫がロイヤルカナン腎臓サポートドライを食べていたとして、週1回1gかつお節を摂取したとしても1週間の総摂取カロリーの0.3%に過ぎません。1日で1gだとしても2%です。1日だと少し多い気がしますが、過剰摂取と言えるかというと、言えないと思います。

しかし、継続的に与える場合、栄養バランスの偏りが長期化することで様々な病状が想定されます。特に腎臓や泌尿器に不安がある場合、キャットフードへのトッピングとして考えるとかつお節のミネラルバランスはかなり悪いので、それをフォローするような与え方ができないのであれば与えないほうが無難です。また、そもそもカロリー過剰にもなりやすいので、肥満等も懸念されます。

逆に言えばかつお節に足りない成分を補てんして栄養バランスを調整できるのであれば与えても問題なさそうとも言えます。その場合、主食のフード量を減らし、その分をかつお節+何かで総カロリーと栄養バランスを取る必要があります。ここまでくると半手作り食になりますね。

いずれにせよ、血中のミネラルバランスや各臓器の状態によっても変わってくると思いますので、便や尿の状態、食欲や毛艶、定期的な血液検査などで気をつけたいところです。

余談:ヤマキかつおパックのノーマルとマイルドの違い

ヤマキかつおパックにマイルドという表記がある商品があるのをご存知ですか。かつお節の血合いを除いて削ったものがマイルドなのです。

上に挙げたかつお節の成分表はノーマルのものですが、マイルドは実は成分が違ってきます。マイルドの成分表がないので想像になってしまうのですが、血合いにはビタミン、ナイアシン、鉄、タウリンが他の部分より多く含まれています。血合いを除いたマイルドのかつお節ではこれらの含有量が下がると推測できます。

猫にとってタウリンは特に重要な要素ですが、プラスアルファのふりかけやおやつとして考えるのであれば、なるべく栄養価が低いほうが望ましいです。よって、仮にヤマキのかつお節を与えるなら、マイルドをさらに茹でたものがベストだと思われます。