私はチーズが好きで好きで仕方ないのですが、猫もチーズを食べます。健康に良いやら悪いやら悩んでいる方もいるかもしれませんので、ちょっと書いてみたいと思います。
チーズの栄養価
まずチーズの成分を考えます。しかしチーズと言っても多種多様ですので、日本ではどこでも手に入るプロセスチーズを見てみます。ナチュラルチーズはまた違ってくると思いますが、基本的には似たような成分です。
メグミルクの6Pチーズの成分です。
6Pチーズは約半分が水ですので、乾燥重量に直してからパーセント換算してAAFCO基準の成猫用キャットドライフードの下限値と比べてみます。
6Pチーズ(乾燥重量) | AAFCO(乾燥重量) | |
---|---|---|
カロリー | 6kcal/g | 4kcal/g |
たんぱく質 | 39.2% | 26.0% |
脂質 | 49.6% | 9.0% |
カルシウム | 1.07% | 0.6% |
リン | 1.75% | 0.5% |
カリウム | 0.124% | 0.6% |
ナトリウム | 1.887% | 0.2% |
マグネシウム | 0.036% | 0.04% |
チーズは栄養の塊ですね。まあ、実際にはチーズは乾燥していませんし、チーズのみ食べて生きるわけではないのでこの比較にあまり意味はありません。ここで注意したいのはバランスです。ちょっと気になる個所を赤くしました。
まず脂肪です。半分が脂肪ですね。猫は脂質を消化しやすいので分量としては人間ほど気にする必要はありませんが、脂肪はエネルギーの塊です。ちょっとだけのつもりが非常に高カロリーになる恐れがありますので、与える分量に気をつけたいです。
次にリンとカルシウム。6Pチーズでは比率が1.63:1です。許容範囲ではあるものの、かなりバランスが悪いです。リン含有率そのものも高いので、腎臓に不安がある場合は避けたほうが賢明でしょう。チーズはカルシウムが多いと思いきやリンの方が多いんですね。
最後にナトリウムです。かなり高めです。同時にカリウム含有量がかなり低いのでバランスが非常に悪いです。ナトリウムとカリウムは互いに拮抗的に作用するので、このカリウム量ではこのナトリウム量を処理しきれません。
結局何が言いたいかと言いますと、猫にとってチーズはミネラルバランスが大変悪く、高カロリーと言えます。成長期ならともかく、成猫に与える場合はごく少量が良いでしょう。腎臓や泌尿器に問題がある場合は与えるべきではないです。
チーズの摂取量
ごく少量とはどの程度をさすのでしょうか。ナトリウムを基準に考えてみましょう。
AAFCO基準のナトリウム下限が0.2%です。1日の必要エネルギーが200kcal(体重3kgの健康な猫)だとすると、1日のナトリウム摂取量の下限は0.1gです。これは6Pチーズだと約10gで摂取できる量です。
同様に、リンを基準にして考えると6Pチーズ約50gで同量の摂取量になります。50gというのは結構大きいですね。ただ、これで1日分ですからね。
なんにせよ現在食べているフードに対して、フードをどの程度減らせばどの程度与えてよいか逆算することができます。ただミネラルバランスは悪いので、毎日与えるのはやめた方が良いでしょう。逆に言えば月に1回程度与えるくらいでしたらあまり気にする必要はないかもしれません。
チーズとラクトース
チーズと言えば忘れてはいけないのが乳糖(ラクトース)です。
猫は牛乳などに含まれる乳糖(ラクトース)を分解する酵素であるラクターゼを持たないか持っていても少ない場合が多いです。ラクターゼが無いとどうなるかというと消化できずに下痢や嘔吐をしてしまいます。しかしこれは猫に限った話ではありません。
哺乳類はミルクで育つ動物なのに変ですよね。もちろん、仔猫のころにはラクターゼを持っているのですが、大人になるにつれて不要になって減少するのです。どの動物も成長したらミルクを飲みません。ミルクは本来は自分で餌を捕れない頃にのみ許された特別な食事なのです。ちなみに猫の母乳に含まれる乳糖(ラクトース)は、牛乳の8割程度です。よって、栄養価的に猫の母乳と異なるのでベストの選択ではないですが、基本的に仔猫は牛乳が消化できます。(ただしノンホモ低音殺菌が良い)
チーズは牛乳やヤギのミルクから作られます。もちろん乳糖(ラクトース)が入っています。乳糖(ラクトース)というのは糖質の一種です。チーズを作る工程の1つに乳清(ホエイ)の除去があります。乳清(ホエイ)の成分は主にタンパク質ですが、大部分の乳糖(ラクトース)も含まれます。牛乳を飲んだらおなかを壊すけれどチーズは大丈夫という方がいるのはこのせいです。
しかし、全てのチーズに乳糖(ラクトース)が含まれていないわけではありません。あくまで生のミルクよりも大幅に少ないだけです。また、チーズは熟成させると乳糖(ラクトース)が分解されますので、熟成させればさせるほど乳糖(ラクトース)の含有率は下がります。
どの程度熟成させればよいのか正確なデータがないのですが、いわゆるハードチーズなら問題ないレベルでしょう。特に結晶化しているようなチーズは確実に分解済です。逆にフレッシュチーズは熟成させないのが売りですので、やめておいた方が無難でしょう。特にリコッタなどはホエイが原料ですので乳糖(ラクトース)濃度が上がります。
6Pチーズのもととなるチーズが何か限定はできないのですが、ゴーダ、マリボー、チェダーあたりだと思われます。いずれも熟成が短いものでしょうが、基本的に2か月程度は熟成させているはずです。
チーズとカゼイン
チーズと言えば忘れてはいけないのはカゼインです。カゼイン自体が健康に悪いわけではありません。実は犬猫用サプリにカゼインを含むものもあります。
チーズはカゼインを含みますが、その多くは分解されます。そもそもチーズの製造過程というのはカゼインからアミノ酸へ分解することとほぼ同義なのです。よって乳糖(ラクトース)と同様に、熟成すればするほどカゼインは減ります。ハードチーズは熟成が進むと最終的にアミノ酸の結晶ができるのです。
猫用チーズってなに
世の中には猫用チーズなるものがあります。基本的には減塩しているだけです。そして品質が人間用チーズの基準以下である可能性があります。
そもそもチーズはカロリーが高すぎるので多量摂取するものではありませんし、減塩といってもそもそもの含有量が高いので減塩しても塩分は多いです。個人的にはあまり意味のない商品だと考えます。
仮に複数のチーズをブレンドしてミネラルバランスを調整した猫用チーズであれば買うに値すると思いますが、ペットフードメーカーがそこまで気にするとは思えません。
猫とチーズまとめ
チーズは非常に栄養価が高いが特にリンやナトリウムのミネラルバランスが悪い食べ物と言えます。チーズそのものは猫にとって害ではありませんが与える分量によって毒になるのは全てに共通した話です。
よって、月に数回程度ご褒美として少量与えるのであれば、それほど気にする必要があるとは思えません。ただし、できればプロセスチーズではなく、きちんとしたハードチーズだとよりよいです。チーズはできるだけ熟成が進んだものの方が良いでしょう。プロセスチーズでも構いませんが、初めて与える場合は便などの様子を見た方が良いかと思います。
総合栄養食と組み合わせる分にはチーズは偏りが大きいので扱いづらいと思うのですが、手作り食などでしたらチーズは活用できそうですね。